ネット通販は上手に使いこなせば都心に出て行かなくても世界中の商品が買えるし、リアル店舗で買うよりも金額が安かったりと、お得なことが多いですから、利用しない手はありません。
しかしながら、通信販売で商品を買って失敗した経験がある方が多いのも事実です。写真のイメージと実物の雰囲気が違っていたということが「失敗した!」と思う原因になっていることが多いようですが、こと家具に関しては20年ほど前は返品率が30~50%とも言われていました。
最近は衣類の場合などは、素材の名称だけでなく、素材感が分かりやすいように、表面の拡大写真を載せていることもあります。しかし、家具の場合はそこまでしてくれていることが少ないのが実情です。ですから、衣類ならアクリルがどんな素材かを知っているように、家具でも例えば中繊維合板がどういった素材なのかを知っておかないと、賢い買い物は出来ません。
というわけで今回は、主な素材素材について見て参りたいと思います。
材質の構造
天然木
無垢板、集成材と呼ぶこともあります。高級な座卓を除いて、いわゆる「一枚板」というものではなく、多くは木の角材を接いだものです。その中でも、ボーダー状に角材を並べて接いだものを「幅接ぎ(はばはぎ)」、レンガの壁のように細かい角材を接いだものを「フィンガージョイント」と呼びます。
幅接ぎのほうが1本1本の材が大きいので木目がきれいに見え、高級感がある一方で値段も高級。フィンガージョイントは若干安っぽく見えるものの、幅接ぎよりも変形が少ないと言えます(木というのはカットされてからも膨張を繰り返すので割れたり反ったりする可能性がある)。
通販で単に「天然木」と表示されている場合、多くがラバーウッドやパイン材など安価な材質であることが多いです。
突板(つきいた)
木材を薄くスライスして何らかの芯材に貼り付けたものを突板と言います。天然木に比べて安価で、高級感も保たれます。深く傷がついた場合は、中の芯材が見えてしまうこともあるものの、彫刻等で彫るようなことが無ければまず問題ありません。
プリント合板
プリント合板は3段カラーボックスのほか、多くの箱物家具に使われています。合板などに木目を印刷した紙を貼りつけたものです。紙なので、キズに弱く、セロハンテープを張って剥がすと表面が剥がれるものが多いです。ただし、次に説明するエンボスシートと同様に剥がれにくい「強化プリント紙」というものもあります。
エンボスシート
プリント合板の木目に合わせて凸凹をつけたもの。プリント紙より上級で強化プリント紙と呼ばれることもあります。素人では突板との判別は難しいものもあります。セロハンテープを貼って剥がしても表面が剥がれることはまずありません。
MDF
MDF合板は中繊維合板と呼ばれることも多いです。木材を繊維状にして固めたもので、悪く言えば厚紙の親玉ですが、強度は十分ありますし、表面は滑らかです。無印良品の「パルプボードボックス」などにも使われています。
パーティクルボード
パーティクルボードは木材を粉砕して固めた板です。MDFとの違いは、表面材として使われることがなく、合板の芯材に使われることが多い点。タンスや食器棚、カラーボックスの側板や棚板の芯材として使われるため、食器棚などの後ろ側から見ることができます。水気に弱く、水分を吸うと膨張してしまいます。
ハニカムコア合板
ハニカムコア合板とは、蜂の巣状に紙を組んで芯材として使った合板です。厚みのある割には軽いのが特徴。デスクなどの天板に使われることがほとんどです。
ランバーコア合板
ランバーコア合板はファルカタ(洋桐)やラバーウッド(ゴムの木)の無垢板を芯材に使った合板です。ファルカタが芯材のものはホームセンターでもDIYボード(カラーボード、化粧棚板)として売られていますが、ラバーウッドの芯材のものは食堂テーブルや学習机の天板として見られるくらいです。
フラッシュ合板
写真を撮る際のフラッシュとは関係ありません。フラッシュ合板とは、中空合板とも言い、芯が中空で、板の四周と一部にパーティクルボードなどの芯材が入っただけのもの。カラーボックスを蹴ると穴が開くのはそのため。室内ドアや家具の側板・棚板などはほとんどがこの構造です。
木の種類
ラバーウッド
ゴムの木からゴムを搾り取った後の廃材(=エコ素材とも言う)。家具用材としては十分な硬さがあるとは言え、爪の先を押し付ける程度で傷が付くレベルです。成長が早いので木目はほとんどなく、高級感には乏しいです。
パイン
パインは日本で言うところのマツ(松)です。節が多く、比較的硬い。加工もしやすい。黄みがかったイエローパイン、白っぽいホワイトパインなど種類は多いですが、無着色の場合、飴色に変化してくるのが特徴。また、程度が悪いとヤニ(松脂)が出てくることもあります。
注意したいのは、例えば食器棚やタンスの場合、引出や扉がパインの無垢板で、側板がパインの木目のプリント合板の場合、経年変化とともに、プリント紙の色はそのままで、扉や引出だけが飴色に変化して、非常に安っぽく見える場合があること。また、無垢板の場合、変形しやすく、新品で届いても全く変形していないことはまず無いです。
ナラ(楢)
家具用材としては代表的な高級材のひとつ。比重が高く、硬くてキズがつきにくいです。木目がキレイで、フローリングや建具などにもよく使われています。木目調のカラーボックスのプリント合板も、多くがこの木目を模しています。近年はオーク(樫)と同じものと見なされることが多いです。中国、ロシア、北米などで伐採されます。
ウォールナット(クルミ)
ウォールナットは特に近年人気の高い木材です。比重はオークと同等と言って差し支えなく、硬くてキズがつきにくいです。木目はまばらでナラやオークほどハッキリしないことが逆に好まれるのかもしれません。
アルダー(ハンノキ)
アルダー(ハンノキ)は比較的木目がシッカリとしており美しいことから近年は家具用材としてよく使われます。比較的やわらかく加工性が良いこともその後押しをしていると言えるでしょう。
ビーチ(ブナ)
ビーチ(ブナ)は木目があまりハッキリしませんが、かすかに年輪の模様はあります。粘りがあるため曲木などにもよく使われます。フローリングにも割りとよく用いられます。
バーチ(カバ)
バーチ(カバ)の木目は後述するメープルにもよく似ており、上写真のようにハッキリとした木目が出ることは少ないと思います。
メープル
もみじのこと。木目は無く、細かい線が斑点のように出ているのが特徴。やや赤みがあり、突板として使われることが多い。
桐
桐と言うと高級な婚礼箪笥に使われるイメージですが、まさにピンからキリまでです。高級品は汗を垂らすだけでパアッと紫色に変色します(元には戻らないので注意)。手触りもとても滑らかです。湿気が高くなると膨張し、乾燥すると収縮するので、タンスの引出しの内部材として重宝されます。
反対に安物は100均の桐スノコなどにも使われます。表面は多孔質でザラザラしており、灰汁が強く最初から黒ずんでいます。よく桐は調湿効果や防虫効果があると言われますが、安物にそんな効能があるわけがありません。
ちなみに、洋桐(ファルカタ)は桐に似ていて軟らかく、安物でも表面は滑らかです。マレーシア製の家具の引出内部材によく使われています。
シナ
食器棚やタンスの裏板の合板の表面や、押入の内部材に使われることが多いです。木目はほとんどなく、加工により比較的表面は滑らか。近年の家具はほとんどホルムアルデヒドが使われることが無いですが、臭いがこもるのはたいていこの木材の臭いだと思われます。
通信販売で見かける主だったものはこの程度ですね。これだけ分かっていれば、素材についてちゃんと表示していなくても、電話で聞けばだいたい分かるはずです。
ただし、色に関しては光の当て方によって見え方が違うので、色で失敗したくなければ、実物を見て買えるお店がいいでしょう。ちなみに、お店で見た場合も一般家庭の照明とは異なるので、例えばタンスなら引出しを一個だけでも外して自然光の下で確認することが必要です。
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